2004年 苫小牧研究林にてシカ柵実験スタート。
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日付:2004年
小咄:
明治初期の大雪と乱獲により一時は絶滅寸前にまで生息数が減少したエゾシカ。その後、禁猟などの保護政策が行われ、個体群を維持するまでに生息数が回復。さらにはエゾシカの持つ高い繁殖力と人間の乱獲によるエゾオオカミの絶滅も要因となり、現在では急速に分布域を拡大しながら生息数を増やしています。その結果、農林業被害、列車障害や交通事故の増加などの都市インフラへの影響、強度の採食・踏み付けによる生態系への影響、国有林、民有林の関係なく森林を移動するため、樹木への食害や角擦り等の森林被害は全道に拡大しています。
2022年6月にS I .D.Eのメンバーで訪れた北海道大学苫小牧研究林では、ミズナラ林に柵を設け、シカ排除区・自然密度区・高密度化区として鹿の頭数を分けた環境を用意しており、その植生の違いを拝見させていただきました。鹿が高密度に生息する区域だけを見れば、それなりに綺麗な森林に思えなくもないのですが、シカ排除区と隔てられた柵の境目を見ると明らかな植生の違いを見ることができます。
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シカ排除区(左上)と高密度化区(右下), 2022.6.17@苫小牧研究林
昨今の北海道では害獣として問題視されているエゾシカですが、具体的にどれほど森林に影響を与えているのかは、やはり実際にその違いを目にしてみないと分からないことが多くあることを実感できます。しかし一方では、シカが棲まない木々が生い茂る柵の中もまた、従来のシカが生息する森林生態系としては異常な環境であることにも気づかされます。もちろん、植物と動物は数千万年の長い時間、進化を共にしてきたことから、何が正常なのか、まだまだ理解しきれないことが多いということです。時間と共に変動している姿を意味する「動態」という言葉で「シカが生息する森林」を捉えようと、様々な活動が行われているとのことで、近年では、過去の森林の様子を絵画や写真などから復元する取り組みなども始まっているそうです。我々が再考しようとする「IEIE」が「自然をあらわにする」というテーマが添えられているように、そもそも健全な自然生態系の成り立ちを明らかにしていくことが重要であるということも改めて考えさせられました。
場所:
#苫小牧市
関係者:
#シカ
#タイプ:出来事_SIDE-B
#2004年